バリュー投資〜CFと投資先日記〜

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バフェット購入時のコカコーラ社の財務諸表分析【〜1996年,KO】〜The右肩上がり〜

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この記事では株式投資でお馴染みのウォーレン・バフェットが、購入した当時のコカコーラの財務諸表をアニュアルレポートを基に分析していきます。

(10-Kだと94年以降のものしか入手できなかったので、90年のものから入手できるアニュアルレポートを参考にします。)

 

バフェットは何回かに分けてコカコーラの株を購入しているのですが、初回の購入時は1988年と資料を入手できなかったので、2回目の購入(買い増し)である1996年の投資について調べていきます。

コカコーラのIRに連絡したのですが、昔の資料は入手できませんでした。。。どなたか持っていませんかね?

 

今回のコカコーラの分析では下記の4つを柱にしています。

  • 財務諸表
  • 事業内容
  • 経営の合理性
  • 市場価値

この分析のフレームワークについては、ロバート・G・ハグストローム著のバフェットの法則を基にしています。

 

では本題に入っていきましょう!下記は目次です。

 

 

バフェットとコカコーラの関係

バフェットがコカコーラを初めて買い始めたのは1988年の夏。

そして暫くはコカコーラの株を1億株きっかりホールドし、1996年にさらに1億株を買い増しします。

その後2000年代になり、2012年にさらに2億株の買い増しをし、現在に至ります。

1988〜1995:1億株

1996〜2011:2億株

2012〜現在:4億株

 

他の会社の株は1億株などきっかりした数字ではないですが、コカコーラだけきっかり億株単位で購入しています。分かりやすくていいですね。

 

ちなみに、コカコーラ社のアニュアルレポート(下記にURL)を見てみると、最後の集合写真的な感じのものにバフェットは毎回写っています。彼はこの時からおじいちゃんでした。

https://investors.coca-colacompany.com/filings-reports/resource-center

 

バフェットが子供の頃からコカコーラは存在していて、箱買いしてバラして転売していたこともあるのですが、実際に購入したのは88年になってからです。

本当は80年くらいからアニュアルレポートを読みたっ方のですが、繰り返しになりますが入手できないので仕方ありません。

 

バフェットが買い増しした96年の投資について見ていきます。96年に購入したということは95年のデータが一番影響が大きいと思うので、今回は95年について特に分析します。

 

 

コカコーラの1996年までの財務データ(決算)

コカコーラの財務データを95年を中心に、損益計算書、バランスシート、キャッシュフローの順に見ていきます。

 

 

 

1995年のコカコーラの損益計算書(P/L)

まずは売上と純利益について。

綺麗な右肩上がりですね。70年代のコカコーラにとっての暗黒の時代から、ロベルト・ゴイズエタ会長とドナルド・キーオ社長の改革が効果を上げ初めているように見えます。

少し見にくいですが、純利益を見てみると89年の翌年以降下がっている様に見えます。ただこれは、保有している証券を売った結果なので本業とはあまり関係がありません。

 

95年を詳しく見ていくと、

粗利益率は61.5%と目安の40%より高く、粗利に占める販管費の割合は63.1%とこちらも高めですが、これは特に悪いというわけではありません。

今まで粗利益率は毎年0~1%ほど上昇していて、粗利に占める販管費も同様のペースで下がっていたのですが、95年は前者は0.4%低下、後者は0.2%増加していました。

粗利益率の低下は甘味料や梱包材のコスト上昇が要因で、販管費は売上増加のためのマーケティング費用や営業効率化、及び株に連動した従業員の報酬が主な増加要因です。

印象としては、今までの一貫した傾向が無くなったのは懸念がありますが、様子見でいいと思います。

 

また、営業利益に占める支払利息の割合は6.6%と一桁台で、借入金にほとんど頼っていないことが分かります。

 

次に売上高純利益率ですが、16.6%とこちらは右肩上がりです。ライバルのペプシは、5.3%なので、コカコーラの「堀」は同業他社に比べて深いと言えます。

ただ、20%以上ではないので、そこまで高い利益利というわけではありません。

 

最後にEPSと配当(Dividens),BPSを見ていきましょう。

 

こちらも綺麗な右肩上がりですね。EPSについても89年の資産売却を除外して考えると、綺麗な右肩上がりとなっています。

 

 

 

1995年のコカコーラの貸借対照表(バランスシートB/S)

ROEとROICを見ていきます。

ROEは順調に上昇しています。コカコーラは当時から自社株買いを行っており、申し分ないROEです。

 

また、このグラフのROICは独自の定義を用いています。3年間について、増えた純利益を、その間に内部留保した利益(純利益ー配当ー自社株買い)の合計で割ります。

俗にいう、投資した1ドルは1ドル以上の利益を上げているか見ます。

このグラフを見てみると基準を満たしているように見えますが、データがまだ少ないのでなんとも言えませんね。

 

では95年のバランスシートを見てみましょう。

売上高に占める売掛金の割合は9.4%、94年は9.1%です。一方のペプシは95年が7.9%、94年が7.2%とコカコーラより売掛金が少ないです。

売掛金が少ないということは、すぐにキャッシュを支払って貰える=競争優位性を持っている可能性が高いということです。

同業他社と比べると劣ってはいますが、そこまで大きな影響はないでしょう。

 

次に負債について。

長期負債を純利益で割った値は0.38と、昨年の0.56から減少しています。半年も経たずに長期負債を完済できるので、永続的競争優位性を持っている企業の特徴を兼ね備えていますね。

 

また、自己株式調整負債比率(総負債を自社株買いの分を足した純資産で割る)は0.68です。基本的に0.7あたりを推移していて、負債がかなり少ないという訳ではありませんが、十分な値です。

 

 

1995年のコカコーラのキャッシュフロー(C/S)

最後にキャッシュフローです。

営業CFは上昇傾向ですが、FCFは波があります。

 

オーナー利益は本来なら、純利益+非現金費用ー売上維持に必要な設備投資及び運転資本の増減という式です。

しかし、維持に必要な設備投資を算出することができなかったので、ここでは営業CFー資本的支出としています。

 

純利益に占める資本的支出の割合は、95年が31.4%、94年は34.3%、93年は36.8%と目安となる50%以下で推移しておりいい数字です。

92年は65.0%、91年は48.9%と資本的支出が嵩む時がありますが、平均すると設備投資は多くありません。

 

 

コカコーラの財務の結論ですが、「堀」となる永続的競争優位性を持っている可能性が高いと言えます。

財務をみるときは、コカコーラは自社株買いを積極的に行っているので、EPSの推移を特に重視するといいと思います。

 

 

1996年当時のコカコーラの事業内容に関する考察

コカコーラの財務内容より、「堀」がある可能性が高いことが分かったので、次は事業について見ていきます。

 

事業はシンプルか?

コカコーラは実にシンプルですね。

コカコーラの事業は、濃縮液を製造しボトラーに売ることです。シロップを飲食店に売ったりもします。

ボトラーは、コカコーラから購入した濃縮液を元に製品を作り、スーパーやコンビニに販売します。

 

ソフトドリンク以外にもFood事業がありますが、売上に占める割合は10%ほど、営業利益に占める割合は0から数%と影響は少ないです。

ほぼDrink事業が鍵を握ります。

 

 

 

事業は安定しているか?

ソフトドリンクへの需要が急激に低下するとは考えにくく、毎年安定してコカコーラの製品は消費されます。

コカコーラの事業は安定していると自信を持って言えますね。

 

95年のアニュアルレポートにも、コーラの代わりになりそうな飲み物はないと明記されています。

 

 

長期的に明るい見通しはあるか?

これも明確にYESと言えます。

95年当時のコカコーラのユニットケースの売上数は12.7billionです。内North Americaの割合は32%、つまり4billionほどです。

一方、コカコーラ製品の一人当たりの消費量は、North Americaが326本なのに対し、全世界では54しかありません。

つまり、North America以外の地域の消費量が倍になったとしても、それでもNorth Americaの1/3以下です。

 

よって、12.7billionのNorth Americaを除く地域のユニットケースの売上8.6billionが倍になったとすると、総売上は21.3billionとなります。

North Americaの消費量の1/3というのは、North Americaの売上が成長しないことが前提です。

それを考えると、まだまだ成長の余地はあるように思います。

 

アメリカ以外の国でコカコーラの飲み物が受けないのではないか?という意見もあると思いますが、紅茶大好きなイギリス、日本や韓国といった東洋の国、ブラジルなどでコーラのシェアは1位です。

しかも、ほとんどの国で2位と2倍以上のシェアの差があります。

コカコーラは全世界で受け入れられていることが分かります。

 

。。。いい事業ですね!

 

1996年当時のコカコーラの経営に関する考察

次にコカコーラの経営についてみていきましょう。

分かりやすく、素晴らしい事業なのは分かりましたが、経営者が合理的でなければ利益は毀損してしまいます。

経営者をこれからしっかりみていきます。

 

経営者は合理的か

経営者が合理的かは資本配分と結果に着目します。

まずは自社株買いのタイミングについてみていきましょう。下記はPERと自社株買いの金額を表したグラフです。

軸の単位については、PERはそのまま何倍かで、自社株買いは100billionです。

ここではざっくりと自社株買いの傾向をつかみたいので、PERを用いて調べています。

グラフを見たところ、92年あたりまでは概ねPERと自社株買いは反比例しているようでしたが、後半はPERと自社株買いどちらも増えています。

これは、単純にFCFが増えたのが原因だと考えられます。

なので、FCFの増加を考慮すると、割安曲面で自社株買いを行っている、少なくとも行おうとしていると言ってもいいと思います。

 

次は、CEOを前回のCEOと比較していきます。

コカコーラのCEO色々変わっていますが、80年から81年までCEOを務めたゴイゼッタが実質80年から97年まで経営をしていると言えるので、80年以前と以後で比較したいと思います。

80年以前については時価総額の成長率のデータしか得られなかったので、それを用います。

74年の時価総額は31億ドル、80年は41億ドルで、複利で4.8%成長しました。

一方、ゴイゼッタ時代の89年の時価総額は267億ドル、95年は937億ドルで、複利で23%成長しました。

この差は圧倒的ですね。

 

コカコーラの経営者(実質ゴイゼッタ)は、合理的に行動していると考えられます。

 

歴代CEOについてはこちら https://blog.goo.ne.jp/cokebrandmgr/e/c89f52a66278475a8546e8d0a00593f0

 

 

 

経営者は誠実か

コカコーラのアニュアルレポートには毎回、「私たちの存在理由はただ一つ、時とともに株主価値を最大化させることだ」と買いてあります。

また、自社株買いも積極的に行っており、株主の方を向いた経営が行われています。

 

今の経営者が誠実だとは断言できませんが、誠実である可能性が高いのではないかと考えられます。 

 

経営者は組織の因習に屈しないか

これは間違いなくイエスです。

ここで組織の因習について説明しておくと、同業他社と横並びに同じことをやったり、今までのやり方を惰性で続けたりといった、自分で考えない状態に陥ることです。

 

ゴイゼッタはオースティンが広げた本業とは無関係なビジネスを売っ払い、利益率の高い本業(原液の販売)に集中しました。

当時は、同業他社が多角化を進める中、勇気ある決断です。(例えばペプシは、スナック菓子やケンタッキー、ピザハットなどを買収していました)

 

コカコーラのCEOは組織の因習には屈しません。

 

1996年当時のコカコーラの市場価値に関する考察

ついにラストです。今まで財務、事業、経営者と見てきましたが、最後は市場価値の考察です。

 

 

事業の価値はどれくらいか

コカコーラの事業価値を推定していきましょう。

自社株買いを積極的に行っていることもあり、今回はEPSを用います。

再びコカコーラのEPSのグラフです。

85年時点でのEPSは0.46、95年には2.37にまで成長しています。(株式分割は調整済みです。)

95年までの10年間で見ると複利で17.8%、80年から95年まで見ると複利で15.3%成長しています。

ここは控えめに15%と同じペースで成長していくと仮定すると、2005年にはEPSは9.59ドルとなります。

95年当時PERは大体20〜30倍で推移しているので、予想株価は192〜288ドルとなります。

当時の米国債10年物の利回りは7~8%なので、8%で現在価値に割り引くと、95年の現在価値として88.9ドルから133ドルとなります。

 

答え合わせに、実際に2005年にEPS、株価がどうなったかを見てみましょう。

以下は株式分割を95年を中心に調整しています。

2005年の予想EPS9.59ドルに対して、実際は4.08ドル

2005年の予想株価192~288ドルに対して、実際は80.64~89.84ドル

 

15%の成長は、達成できませんでした...

 

 

 

事業の価値よりもはるかに早い値段で購入できるか(安全域はあるか?)

2005年の予想株価192~288ドルに対しての、95年時点での予想期待収益率は、1995年の終値74.25で購入したとすると、10%~14.5%と悪くはありませんでした。

また、予想株価を8%で割り引いた95年の現在価値が88.9~133ドルということは、当時の株価74.25に対して安全域も確保できています。

ただし、割引率をS&P500の平均リターンである10%に設定した場合、レンジの下限で当時の株価と同程度になってしまうので、「十分な」安全域があるとは言い難いと思います。

つまり、成長の前提が崩れれば相応のダメージを負う可能性が高いというわけです。

ではどうして投資するかというと、シンプルで安定しており、有能な経営者がいるからです。これにより、最低10%という低い予想収益も許容できています。

ただ、残念ながら15%の成長はできませんでした...

 

現実は95年の終値と05年の終値を比べると、複利で0.8%しか増えていません。

一方、S&P500は7.4%増加しています。

 

いくら事業、財務、経営者が良くても微妙な結果に終わるときは終わるということが分かりました。

慢心しすぎることは危険だということがより分かりました。

 

機会があれば、2000年代前半のコカコーラの停滞理由についても調べていきたいと思います。